KIEPSの取組み内容 ❶

起業活動支援プログラム・GAPファンドの運営

KIEPS起業活動支援プログラム・GAPファンドは、起業に向けて意欲的に取り組む教員等の自己の研究成果に基づく大学発ベンチャーの創出を促進することを目的とし、研究成果実用化の可能性が高い構想・提案に対して、試作品開発等の研究開発資金を提供するものです。資金提供と合わせて、研究代表者と事業化支援人材等が、事業化支援ノウハウを持つアクセラレーター等による研修やメンタリングで起業に有益な知識を実践的に学習します。あわせて自らの技術シーズを基に実用検証可能な最小限の試作品やデータ(実験結果、計算結果)等を準備し、想定顧客等の評価を受け、その結果や社会ニーズを研究開発にフィードバックさせることで想定ビジネスモデル仮説を現実化・高度化させます。

 
カリキュラム

研究開発課題一覧

研究開発課題 1⃣

底生ザメ由来ナノボディ抗体の開発と事業化

現在難病指定されている自己免疫疾患などの多くの疾患においては、細胞内タンパク質-タンパク質相互作用(PPI)が創薬標的になることが多い。しかし、現存の低分子医薬品および抗体医薬品開発技術では、細胞内PPI阻害剤を開発することは困難である。これを解決する医薬品モダリティーとして、ナノボディ抗体がある。難治性疾患を治療できるようになれば、市場規模は10兆円以上と見込まれる。また、現在、高価な治療薬であるヒト化抗体および完全ヒト抗体を、ナノボディ抗体に置き換えることができれば、近い将来起こると予想されている医療経済の破綻を解消できる可能性がある。また、医薬品開発以外にもナノボディ抗体の事業化形態として、抗体試薬市場や臨床検査薬市場への参入が見込まれる。

【研究代表者】
国立大学法人 長崎大学
先端創薬イノベーションセンター センター長・教授
田中 義正
【2021年度 支援人材】
長崎大学 研究開発推進機構 知的財産室
リサーチアドミニストレータ
山本 圭一郎

研究開発課題 2⃣

クルマエビ抗体様蛋白質Dscamを用いた診断法・治療法の開発

哺乳類抗体は診断や治療に広く応用されている。しかし哺乳類抗体は2つの遺伝子産物から作られるため、遺伝子工学による単離と改良が困難である。そのため哺乳類抗体を用いた診断法・治療法は高額となり、社会保険財政を圧迫するという問題がある。一方、これまで下等動物は抗体を持たないと考えられていたが、最近、甲殻類において、感染した病原体に依存して多様性が変化し、病原体に直接結合するという抗体と同じ働きを持つ蛋白質Dscamが発見された。Dscamは1つの遺伝子から作られるため、遺伝子工学による単離と改良が容易である。我々は、ヒト病原体ラッサウイルス抗原を接種したクルマエビから単離されたDscamが、ラッサウイルスに結合することを突き止めた。一方、Dscamにはヒト・ホモログが存在し、ヒト化したクルマエビDscamを用いた治療法も考えられる。本研究では、クルマエビDscamを用いた診断法・治療法を開発し、産業展開することを目指す。

【研究代表者】
国立大学法人 長崎大学 熱帯医学研究所 准教授
久保 嘉直
【2021年度 支援人材】
長崎大学 研究開発推進機構 産学官連携推進室
サーチアドミニストレータ
松田 三央子

研究開発課題 3⃣

皮膚病変を伴う成人T細胞白血病に対する免疫エフェクター細胞療法の事業化

成人T細胞白血病(ATL)は九州・沖縄地方に多いウイルス性疾患である。しかし、抗がん剤や細胞移植など現行の標準医療に抵抗性の症例も多く、予後は悪い。これまでに申請者らのグループは、γδ型T細胞が効率的に成人T細胞白血病細胞を傷害することを確認し、細胞輸注療法が可能であることを見出してきた。今回、長崎大学病院発ベンチャーを設立し、これまでアカデミアで構築してきた細胞療法の技術を医師主導型治験の枠組みで臨床応用することにより、新規医療事業を展開し、アンメットメディカルニーズに対処する細胞医療モダリティーを確立する。

【研究代表者】
国立大学法人 長崎大学
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚病態学分野 教授
室田 浩之
【2021年度 支援人材】
長崎大学 ICT基盤センター 戦略職員
深江 一輝